LILIE北大路

京都市内に建つ、地下1階、地上5階建ての複合ビル

House+Apartment+Tea+Theatre 京都市内に建つ、地下1階、地上5階建ての複合ビルである。

地下は、京都初の地下能会館となっており、そこには本格的な能の敷舞台(T)がある。ここでは、能の稽古を中心に、様々なジャンルの舞台も開かれる。1階には大小のお茶室(T)があり、そこは茶庭を楽しみながら、一服のお茶をいただいたり、稽古をする場である。この地下の能舞台と1階のお茶室では、能やお茶以外にも、様々な伝統文化人とのコラボにより、幅広い稽古が受けられ、京都の伝統文化を国内外に発信する新たな拠点となっている。その他、2階は能楽師であるクライアントのご自宅(H)で、3階~5階まではファミリー層向けの賃貸住宅(A)といった構成となっており、各層ごとに全く違う空間構成を実現するために、構造的には非常に複雑なものとなっている。そして、能楽会館、お茶室、自宅、賃貸住宅として4つの顔を持つことになるこの建物のファサードには、日本の伝統建築に欠かせない水平ラインを強調するための付庇を各層間に設け、その各層はアルミの縦格子で覆うことで、京都の伝統的ヴォキャブラリーを用いつつ、街並みに調和するデザインとした。更に建物へのメインアプローチとなる東南角は、乳白色のグラデーションガラスで包み、訪れる人々への道しるべとなる行燈のようなイメージを取り入れたデザインとしている。最終的には街のシンボルとなるような特徴的なものとなったのではないだろうか。

世阿弥の能楽書の中に「舞の中で動から静、そして静から動へと移り変わるときに何もしない。その間合いを面白く見せなければ名人芸とは言えない」とし、間合いの大切さを説いているが、この建物では、行燈に包まれた階段が間合いの空間である。外の喧騒、つまり「動」から階段を降り、「静」の空間へ降り立つ時の中間領域「間合い」を抜けることで、精神性を高めて欲しい。